第56回 全国人権・同和教育研究大会

研修報告U (現地学習会)  map

  事前学習T  現地学習U  全国研修V

期間:2004年11月26日(金)  時 分〜 時 分

場所:東大阪市立長瀬北小学校

    文部科学省委嘱・大阪府 「学力向上フロンティア事業」 指定  「目指せ!オンリーワン」 東大阪市教育改革推進モデル校

報告者:飯田 優一

U.現地学習会

 現地学習会として、東大阪市立長瀬北小学校(文部科学省委嘱・大阪府「学力向上フロンティア事業」指定「目指せ!オンリーワン」東大阪市教育改革推進モデル校)において行われた研究発表会〔公開授業・全体会(研究協議・講演)〕に参加した。
 公開授業では、テーマ「中学校区による合同授業『中学校区発!わたしたちのまちづくり』」の人権総合学習に参加した。
 本時は「もっとみんなが住みよい町にするために、自分の考えを伝える」「金岡中学校、長瀬東小学校、長瀬北小学校の人たちの“想い”を聞き、自分の考えや行動にいかす」を目標として、中学校区(金岡中学校)の中学1年生・長瀬東小学校の4年生・長瀬北小学校の4年生が5〜6人のグループになり、そのグループ内で以下のように学習が進められた。
1.公開授業
  1. これまでの学習を通してみんなに考えてほしいことを伝える
     
    ;各自壁新聞などにまとめ発表

  2. グループの人の考えてほしいことを聞いて、自分の思ったこと、考えたことを書き、伝える
     ;みんなの書いたものを模造紙に貼る

  3. 本時の学習のふりかえりを書き、発表し合う

 考えてほしいことの発表では、ゴミの問題や障害者に対する差別に関するものが多かった。段ボール箱に写真を貼ったり、パンフレットのように見開きにしたりと、みんなに伝わるようにとそれぞれ工夫していて、「みんなに伝えたい」という気持ちが伝わってきた。また自分の思ったこと、考えたことを書き、伝える活動では、それぞれ自分の言動をふりかえり、今後このようにしていきたいという思いや考えが書かれていた。照れや恥ずかしさがあると思われるが、素直に表現されていた。なかなか書けなかったり、抽象的な文章になっている子どもに対しては、共感し、話をしながら感じていること、考えていることを引き出し支援が行われていた。

 この授業を通して、中学校区による合同学習のよさを感じた。学習を通して、子どもたち一人ひとりが自分自身・周りの人が考えていること・思っていることを意識し、その考えや思いを共感・共有することが出来ると思ったためである。また、それが実際に見聞きし、体験したことをもとに話し合われていて、高め合いにつながっていると感じたためである。そして、地域で希薄になってきている異年齢の集団をつくり、合同学習を継続して行うことにより、それぞれ親しくなり、それが学校以外の時間、日常の中で活かされていくのだと思ったためである。

 全体会では長瀬北小学校の取り組みの報告とその取り組みに携わっている西川信廣教授(京都産業大学)の講演が行われた。

 取り組みの報告では、「生きる力としての学力が育つ学びの創造」〔根っこでつながる集団作りを基盤とし一人ひとりの確かな学力の向上をめざす(教科の学習と人権総合学習の両輪で)〕というテーマのもとに取り組みまれてきたの実践のまとめを聴いた。

その内容を以下にまとめた。

  1. 長瀬北小学校のめざす学力向上とは「生きる力としての学力」の育成をめざすことである。それは「人権教育としての学力向上」である。

  2. 人権教育としての学力向上の推進は、まず子どもの実態からのスタートするものである。その実態を「学びの姿からの課題」「その原因や背景」からとらえ「一人ひとりのこの課題に応じたきめ細やかな支援を行う。そのためには「総合的な取り組み」が必要である。

  3. 総合的な取り組みの重点課題として「基盤としての根っこでつながる集団作り」「自己学習力の形成」「教科の授業改革の推進」「家庭・地域の教育力の高まりをめざす」ことを挙げている。

(1)学力向上の基盤としての根っこでつながる集団づくり

  1. 生活でつながる学びの集団づくり

  2. 「この子」にこだわる取り組み

  3. 6年間を見通した人権総合学習の積み重ね(低学年;自尊感情を高める。中学年:人権感覚を高める。高学年;自分の生き方をつくる)

  4. 小中の連携による9年間を通した取り組みへ(中学校区の合同授業)

(2)自己学習力の形成

 自ら学習のかじを取る力、すなわち自らの学習を深めたり、改善していける力を育成する。それが「生きる力」「自己問題解決力」になり、人生でぶつかる問題に立ち向かい乗り越える力につながる。
 そのために、結果だけではなく「学習のプロセスを意識させる」必要がある。

(3)教科の授業改革の推進

  1. すべての教科で一人ひとりの習熟度を考慮した授業を進めていく(一人ひとりを大切にする授業の充実)

  2. 重点教科(算数・国語)では、少人数展開の工夫をすすめる

  3. 自己学習力の育つ授業づくりをすすめる

  • 人権教育の中での少人数授業(習熟度を考慮した)

  • 自己選択し学べる複線化の多様な学習過程

(4)家庭・地域の教育力の高まりをめざす

  生活面での子どもたちへの支援も行う。

  1. 保健室にて(不定愁訴の子どもへの支援・朝食、睡眠など健康な生活のための支援)

  2. 家庭訪問(基本的生活習慣の確立・家庭学習環境づくり。繰り返し行うことで保護者の頑張りを引き出し、子どもによい影響が出ている)

 一人ひとりを大切にした人権教育としての学力保障をめざし、個に応じた支援の積み重ねにより、個人的に見ると、厳しい状況の子たちについても、自己学習力の育ちにともない得点が上昇
2.講演

 講演ではテーマ「自己学習力の定着をめざす指導のあり方−根っこでつながる作りを基盤として−」を聴いた。

以下にその内容を講演と資料をもとにまとめた。

1. 大阪がめざすフロンティアとは?

 一言で表すと「だれも見捨てない」教育である。

 広がる学力格差(背景にある家庭環境の格差(経済格差・通塾率など)に対応するためにはこれまで以上の積極的な学力保障のための教育的支援が必要である。習熟度を考慮した少人数指導・学校間連携はそのための方策である。それらは子どもの実態から全てが始まり、どの子も大切にする授業の実現をめざす「わからない」という子どもの違いを大切にすること。(「わからない」の中身は様々で、それぞれわかり方も違う。そのためにいろいろいろな支援の方法がある)。その習熟度は知識・理解という点数化される面だけではなく、興味・関心・意欲・態度も含めて考えるべきである。

2. 長瀬北小学校の実践−習熟度を考慮した少人数は人権教育である
  1. 「この子」にこだわる教育実践がなされている。それは今の「この子」の状態に何が必要であるかを考え取り組むことである。

  2. 自己選択出来る多様な学習過程・形態の工夫がなされている。(「わかる」という実感が自己学習力につながる)

  3. 集団作りを重要視した取り組み(生まれや育ち、背景を客観的に見つめられる・友達の話を受け止められる力・関係を育てる・自分の生活を語れる仲間づくり)

  4. 習熟度を考慮した学びの集団づくりの中で「教えあい、学びあい」の関係が生まれる。(「わかる子」と離れることで「わからない」と言えるようになった。周りの友達も「わからない」と言うことで安心感を持ち、その安心感が互いに「こうしたらどうか」という教えあい、学びあいにつながる。それが発展し、ペア学習や班学習の中で友達を支援しようとする子どもたちも出てきた)

3. 習熟度別指導をめぐるいくつかの論点と展望
  1. 習熟度別指導では学力は伸びないとの考えに対して、否定する。他の学校での取り組みを見ても、伸びている。

  2. 習熟度別指導は差別につながるとの考えに対して、集団づくりがなされていないことがそういったことにつながるのではないか。先生が、友達が自分のことを見てくれている・自分のことを大切にしてくれている・大切にされている、といった実感を持つことが自尊心につながり、それが根っこでつながる集団づくりの基盤となり、友達の思いを汲み取れる、すなわち差別のない習熟度別指導に耐えられる集団となり、その指導は差別につながらない。

  3. 今後、生活にひろがりが出てきて、青年文化を吸収していく中学生になった時、どう学びと向き合っていくか

  まとめ

 家庭環境による学力格差を少なくすることが学校教育の使命の一つとして話されていた。学力保障の観点から習熟度別指導は人権教育の一方策であるとのことであった。それは習熟度別指導に耐えうる、根っこでつながる集団づくりが基盤となっていた。「根っこでつながる」ためには自分のことを語れる、相手のことを受け入れられる力が必要であり、その力を培う一つの授業として、公開授業で見た人権総合学習があり、その中での授業の進め方・教材に工夫があった。

 人権教育の枠の中で考えた時に、聖坂で大切にしている、その子をまるごと受け止めることから始まる教育、発達段階・障害特性・生活年齢を配慮した教育は、学力保障につながっていると感じた。

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Revised: 2015/11/11.