第56回 全国人権・同和教育研究大会

研修報告V (全体会・研究大会)  map

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期間:2004年11月27日(土)〜28日(日)  時 分〜 時 分

場所:大阪市中央体育館(大阪市港区)

報告者:飯田 優一

V.全体会及び地元特別報告

 大会テーマ「部落の現実から深く学び、生活を高め、未来を保障する教育を確立しよう。−部落問題を解決し、人権文化の創造をはかるために、同和教育の充実と発展を通して人権教育・人権啓発を構築していこう−」地元大会テーマ「あなたに伝えたい 人権教育が開く未来を〜にんげんってええなぁ このまちってぬくい〜」のもと、11月27日、28日、大阪市中央体育館において開かれた。

 オープニングセレモニーでは大会の基調提案と特別報告として大阪府の中学校区に結成された地域教育協議会(すこやかネット)でぬくもりのある町づくりを進めている様子を踊り・劇・演奏などで発表した。学校・家庭・地域が連携(協働)して子どもの育ちと学びを地域ぐるみで高めていこうとする取り組みで、中高で取り組むエイサーや子育て支援の一環とした子育て劇の上演、部落差別と深く関わってきた北條太鼓演奏など紹介された。

 家庭・地域の教育力が低下しているといわれているが、それを高めるために意識的に地域教育コミュニティづくりなど再構築していこうとする姿が見て取れた。

 

W.分科会

 二つの分科会に参加した。一つは「人権確立をめざす教育の創造」(部落問題をはじめとする様々な人権問題の解決をめざす教育をどう創造しているか)、もう一つは「生活課題と学習活動」(部落問題をはじめとする様々な人権問題の解決をめざす学習活動にどのように取り組んでいるか)であった。
 その中で三つの分散会へ参加し、そこで報告された6報告と総括討議の内容を以下にまとめた。

1.人権確立をめざす教育の創造
 
(1) 「人権空間」の広がりを求めて(愛媛県立松山中央高等学校)

 松山市には同和地区が点在しており、その中にある高校として、人権教育のさらなる充実を図り、同和問題をはじめとするあらゆる人権問題の解決に取り組んできた実践の報告がなされた。
 報告者が抱く「人権空間」という言葉のイメージを、

  • ありのままを受け入れる(楽しく学ぶ。イメージ・感性でとらえる)

  • 差別すると不利益を被る

  • 命を大事にする

]と表現していた。

@人権空間をつくるために

 人権教育を推進するために、組織を再編し、教職員研修会を毎月行っている。外部講師を招いての研修の他、「人権をより身近に実感できているか」という課題を話し合い、「人権空間」をつくるという視点で研修会を実施している。

  • 「人権の日」の取り組み

 資料プリントなどを使い、自分とは無関係だと見過ごしがちなことの中に、自分とつながる「何か」を見いだせる感性を育み、人権尊重の意識を高める活動の時間を設定している。

  • 混合名簿の使用

 男子・女子が別々ではなく、対等なパートナーであるという意識を高めている。

  • PTA人権委員会とPTA通信

 PTA会長を中心に人権委員会を組織し、講演会や人権教育の研究授業に参加している。またPTA通信に人権・同和教育シリーズを掲載し啓発に努めている

A生徒の思いに気づくために

 生徒が相談しやすい環境づくりに努め、教育相談室の場所の移転・室内環境の整備・スクールカウンセラーの活用・電子メールの利用などを行ってきた。

B人権広場を広げるために

 人権委員会を設け、意識調査や新聞の切抜きなどをはじめ、四国朝鮮初中級学校との交流など行っている。
 報告の最後に生徒の人権作文が紹介された。それはクモ膜化出血で倒れ9年間不自由な生活を過ごすお母さんにあてた手紙であった。障害を持ったお母さんに対し、軽蔑の目で見続けたこと・使ったものを使いたくない、嫌だ、汚いと思いつづけてきたことなどを謝る手紙であった。報告者は実践の成果としてこれを発表したようだが、助言者からは心の内側を汲み取ることを大事にすることが大切で、その手紙を書くにいたるまでの心の変化やそれまで人には言わなかった・言えなかった本人の気持ちを分かってあげることが必要であったのではないか、との話をした。
 教職員間での話し合い(人権問題をより身近な課題として考え、生徒に伝えること)・多角的な取り組みの必要性・それと同時に一人ひとりの心を感じる・寄り添うことの大切さを感じた報告であった。

(2) こころに届く活動を〜「障害」者との交流や隣保・児童館訪問を通して〜
  (香川県大手前高松高等学校)

 生徒が「こころ」の壁をなくし、自分の周りの人間関係を理解すること、「ともに生きるこころ」を育み、「差別するこころに立ち向かう力」をつけていくことを人権・同和教育の目標に掲げてきた実践の報告がなされた。
 高校一年の一学期に講演会を開き、それが生徒にとって三年間の人権・同和教育の初めになる。生徒は道徳の授業で習っているが、実際に差別を受けている人から話を聴くことで、実感することが出来たという。
 それ以降、障害のある人との交流や同和地区の人から話を聞くことなどを行っていくが、生徒はははじめ接し方に不安を感じたり、差別の現実に実感を持てないことが多い。
 話をする側の人もつらさを感じたり、心配に思っていることがある。しかし、若い人がどう思っているか知りたい、謝った認識があれば正したい、との思いから話をして下さっている。
 実際に関わり、話を聞いた後で、話し合いをし、その中で自分の意識が変わった点を出し合っていく。それは生徒にとって何ものにもかえがたい貴重な経験になっている。

 聖坂でも交流学習が行われている。聖坂の児童・生徒にとっても、相手校の児童・生徒にとっても貴重な経験になっている。ともに活動することで、一緒に時間を過ごすことで、実際に心と心が触れ合う時間を持つことで、相手の気持ちを感じる・分かるようになるのだと思った。そのためにも交流学習の大切さを改めて感じた。

(3) きっかけ、出会い、自分発見!(長崎県大瀬戸町立大瀬戸中学校)

 「平和と人権を考える集会」として全校集会を年二回開いている。今回の報告では「差別の歴史と現状」をテーマにした取り組みが報告された。
 事前学習に「総合的な学習の時間」7時間と道徳1時間を使い、渋染一揆についての学習(文化祭にて劇で発表)や映画「橋のない川」の鑑賞、調べ学習(世界で人権を守るために闘ってきた人々について。キング牧師など)に取り組んだ。そして全校集会ではテーマのもと部落解放同盟の人の話を聴いた。
 それらの取り組みの前にはクラスで言葉によるいじめがあった。言う側の気持ちを聞くと「軽い気持ち」「きらいだから」「あいつも言うし」との言葉が返ってきた。そう行った状況において、お互いに心を見つめる時間・話し合う時間を取る必要性を強く感じたこともあり、この学習が進められた。
 そして高校の入学式で「これまでの人権学習を高校生活でも活かしていきたい」と述べたという。その場だけでは終わらない教育の大切さを改めて感じた。

 学校の授業の中で学んだ歴史や現実を、日常の中で意識し言動にかえていく。そのためには継続的な学習・様々な場面で日常に返していくこと・他人事ではないというとらえを育むことの必要性を感じた。

2.生活課題と学習活動
(1) かわいそうっていうだけやったらあかんのや〜
小学校『にんげん』学習交流会のとりくみ(大阪府堺市人権教育研究会)

 この交流会は堺市立各小学校(全90校)の6年生の子どもたちが25の会場に集い、事前に共通に学習した人権教育読本「にんげん」教材を通して、部落問題やいじめや障害者問題などの身近な差別や人権問題、不合理について学んだことを交流しながら人権確立に向けての考えを深め合う取り組みの報告がされた。90校中1校が同和校で、ほとんどの児童が被差別部落在住の学校がある。この交流会で自分が被差別部落に住んでいることに気付く児童もいる。
 この交流会では、大人数のためなかなかはじめは意見を発表する児童が現れないが、一人二人と発表する中で次第に手が挙がり、普段発言が苦手な児童も周りの友達から励まされ、エネルギーを受けて発表出来ることもあるという(交流会の核)。
 教材を通しての意見から次第に身の回りの人権問題に話が及ぶようになり、弟が養護学級に通っている児童や声やいじめをうけた児童の声が響き、会場にいるものが心を打たれた。
 中学生になると対する人によって使い分けが出来るようになり、真の積み上げが出来ない。指導も単なる言葉狩りになることが多い。しかし「しんどい子に響き合う・共感・連帯出来るようになってほしい」との願いが報告者から語られていた。
 話し合い、語り合いの大切さをこの報告からも強く感じた。相手の話を聞き、自分をふりかえる、そして生活の中に返していく、その時間、その積み重ねが大事だと思った。

(2) 差別をなくそうとする人の輪をひろげよう
(三重県あかほり人権まちづくりの会「コラソン(赤心)」

 2003年度三重県四日市市赤堀教育集会所主催の人権啓発リーダー養成講座の参加者が講座修了後自主的に会を結成。きっかけはファシリテーター(進行役)としての参加依頼が同和問題研修会(地区懇談会)があったためである。その行政主体ではなく住民主体の人権啓発活動の実践報告がされた。
 コラソンでは講師の講演を一方的に聴く形ではなく、参加者がクイズ形式の活動など取り組む「参加型」をとって啓発活動を行っている。
 参加者の中から「差別はないんじゃないか?」などの意見が出ることがあるが、参加者同士で話し合い、解消・解決することがよりよい活動であると語っていた。
 地域の人の主体的な活動が着実に行われいることを知る報告であった。

3.総括討議

 「人権確立をめざす教育の創造」の分科会の総括討議に参加した。
 報告に対しての意見に限らず、活発な意見発表が行われた。

  • ダウン症の生徒が担任する通常学級へ入ってきた。はじめいじめなどの心配をし、よくてもはれものに触る感じではないかと思っていた。しかし小学校時代通常学級で一緒に過ごした仲間と自然な関わりがあり、一緒に歌をうたったり、本を読んだりする姿を見ることが出来た。知識だけでは分からない直にふれあうことの大切さを知った(石川・ 中学校教員)

  • 同じ言葉で話せなくてよい。それぞれの言葉で差別について話せること、差別をなくすことが大事

  • 障害者は守るというものではない。自身もそう思っていない。困っていると思って声を掛けてくれる人がいるが「いいです」と言っても手を貸したがる人がいる(脳性麻痺の方)

  • 交流学習を何度しても「お客さん」「障害児学級の子」として関わりを持つ。意識を変えるにはシステムを変える必要がある。(靴箱の位置など小さいと思えることからでも行うことが大事。良くも悪くも意識は非日常から生まれる)(通常学校教員)

  • 障害のある子に対してどのように自分の障害について教えるか。「どうしてみんなと同じ学校ではなく養護学校なのか」との子どもからの問いに対して(鳥取・倉吉養護教員)

  • 障害者問題は障害のある人の問題ではない。

  • 在日朝鮮人の方が保護者にいるが、自然に接している。報告を聴いて「しんどい」「かたく考えすぎ」と感じた。自然に接すればいいのにと思った。

 → 自然に接することが出来ない歴史・思考・偏見が現在もある。そのためにも同和教育は必要であると思った。

 

X.まとめ

 2万人を超える参加者が集い行われた大会に参加出来た時間はとても有意義であった。会場や報告者・参加者の熱いおもいがひしひしと感じられた。
 これまでいわゆる「同和教育」「人権教育」というものを道徳の時間以外に学んだ記憶がない私にとって、人権教育について知る機会となった。そして被差別部落の問題が今なおあり、人権教育に熱心に取り組んでいる大阪の地でこのような大会に参加し、学ぶことが出来たことは、大きな勉強となった。
 障害児教育に携わっている自分であるが、人権・同和教育について、また差別について改めて考え学び直すきっかけとなった。
 今後、学びを深めるとともに、人権教育の中の聖坂というものについても自分なりに考えていきたい。

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Revised: 2015/11/11.