新しい教育と新しい教室について


校長 柴田 昌一 (現理事長)

 第2次大戦後、イギリスから始まった教育改革が、欧米先進諸国へと広がり今日に至りました。その内容は、一斉画一教育から個別化、個性化教育への改革です。画一的に黒板と教科書を用いて、教師が一方的に教え込む形態から、個別のニーズに応じたカリキュラムを用いて、自ら学習する過程を重視する教育への転換です。

 また、教師が教育の全般を担う形態から、必要に応じて専門のコンサルタントやセラピストなどのサポートを得ながら行うチームティーチングへ、校舎や教室も単調・無機的な環境から多様でフレキシブルなものへと変革が求められるようになりました。更には、教育への保護者の意見の反映、ライフステージを見据えた幅広い教育内容の充実を求められるようになりました。これら教育の総合システムが、昨今日本でも盛んに取り沙汰されるようになったIEP(個別教育計画)であると思います。

 日本でも障害児教育(特に知的障害)の場合、その特性からかなり個別的な教育が行われてきたと思いますが、本校でも発達年令、生活年令、障害種特性の三つの視点から、個別のニーズに応じた教育実践を積み上げてきました。今後は更に、IEPの理念に学び、トップダウンの視点から社会生活スキル訓練など十分含まれた幅広い教育内容と、個別に応じやすい教育システムを整備したいと考えています。

 今回の本館新築に当たっては、個別に応じやすいフレキシブルな教室を作りたいと考え、全員で意見を出し合い集約し計画しました。また、既存校舎についても、同じコンセプトで改修し、同じ学習家具を揃えました。このコンセプトを新旧比較して具体的に示すと次のようになります。

教師が教える教室空間 生徒が学ぶ教室空間
     
   管理的に閉じこめられ強制的に  学習させられる教室空間  開放的で自主的に学習に取り組む教室空間
壁に囲まれドアが閉められている教室。壁が反響板となって教師や生徒の声、活動の音が増幅する教室空間   壁が少なく廊下に解放された教室空間。開かれた空間とカーペット床で反響が少ない空間。
     
教師中心に構成された固定的な教室 学習内容の必要に応じて構成するフレキシブル(柔軟性)な教室空間
黒板と教壇を中心に構成された画一的な教室構成。教師が全員の前に立ち話す授業が多くなりがち。全員参加が必須条件でおとなしくしているだけの授業参加が多くなりがち。   集団指導、個人指導、自己学習などが多様に展開しやすい教室。教師と生徒が同じ目の高さでの学習。個々人でリラックスが可能なフリースペース空間のある教室。
     
既成の画一的な学習家具 オリジナルな学習家具

 このほか、教室カーペットや学習家具などの色を各学部のシンボルカラーに統一しました。カーペットは、更に各教室の色に差異をつけ、各教室空間をシンボリックに表しました。これは、単なるデザインだけでなく教室を分かりやすくする校舎の構造化の意味があります。

 新教室は、まだわずかな使用期間ですが、予想以上の効果があることが分かってきています。先ず新教室で懸念されたのは「特に小学生は壁のない教室で落ち着いて教室に居ないのではないか」ということでしたが、逆に今までにない集中力を見せて担任を不思議がらせています。これからも、いろいろ子供たちは不思議がらせてくれるものと期待しています。

小学部教室

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Revised: 2011/12/21 .